松井誠剛という服
いつも彼の服を見る度、影に潜む“カッコ悪さ”に惹かれる。僕が思うアベリアのデザイナー、松井さんの好きな所はカッコ悪い部分も恥ずかしがらずに見せる所。ファッションデザイナーはこうじゃないといけないという風な感じが全く無い。余計なプライドも。
今回のシーズンは、人間っぽい服を作りたかったと言っていたが、確かにアベリアの中に依然としてある人間っぽさがより前に出ている印象だった。これは、松井さん自身そのものを表していることであり、憧れに想いを馳せる今までのファッションデザインとは少し離れた、等身大の服作り。
多くのデザイナーはカルチャーや歴史、異なった分野から着想を得るのに対して、アベリアは自身の内にあるイマジネーションでデザインを組み立てていく。そして、様々な文化からエッセンスを咀嚼、吸収し、形にしていくのとは対照的に、簡素なプロセスで生まれる。みてくれはクールなのに自然と親近感が湧く、不思議で可愛い服だ。
彼の姿を見ていると、必ずしも物作りの背景にカッコ良さやお洒落を求める必要があるとは思わなくなってくる。そして、肩の力が抜けるような意識に変わる。これを、松イズムと名付けたい。難しく考えずに、たまには簡単な理由でもいいんだと気付かされる。
彼は服に対しての造詣がそれほど深くない。それが故に、自由なクリエーションに繋がっている。良い方向に働いているのは、彼の天然のセンスありきだと断言できる。本人は、デザイナーだという意識があまり無いと言っていたが、それはABELIA EDOWARD GOUCHAをやる上で大切な感覚なんだろう。あくまでも、ニートが作る格好良いユニフォームといった具合だ。
今回でアベリアは4シーズン目を迎えるが、着々とブランドとして成長していると感じる。世の中のデザイナーは日々アップデートしながら、死ぬ思いで服を作っている。だから、今が1番格好良いに決まっている。デザイナー曰く原点回帰的なコレクションになったという、新生アベリアを是非見に来てください。明日からです!
佐々木
Abelia Edoward Goucha 23FW Exhibition
4月29日(土)~5/1(月) 13:00-20:00