X-Over
Dizzyの世界には、年齢、性別、関係なく、あらゆるジャンルの人々が混在する。編集長であるMilahの独特な感性でピックアップされた、様々なクリエイターやアーティストはDizzy Magazineというフラットなフィールドに並び、それぞれ個性を存分に表現している。ストリートのDIY的な思想に触発され、ZINEをルーツにスタートしたMilah LibinとArvid LoganによるDizzy Magazineは今年で8号目を迎えた。今号はジャマイカを拠点とするアーティストをフィーチャーした、Jamaica Edition。ゲストエディターにビジュアルアーティストAnna Pollackを迎え、ジャマイカにルーツを持つ彼女独自の感性で選ばれたアーティストを取り上げた内容となっている。
最近Dizzyが定期的に発行しているMishou Magazineも新たなプロジェクトの一環で、誌面では主に15歳以下のアーティストをピックアップした内容になっている。子供のイラストや作品がクールにレイアウトされた独特な構成で、若い世代をターゲットに販売しており、これを見て子供の頃からアートに対しての意欲や感受性を高めてほしいという想いがある。雑誌の売り上げの50%は、美術教育を中心とした公立学校や、文化施設などに寄付されるという、ハートフルな雑誌だ。参加アーティストのクレジットもしっかり記載されている。こちらは数に限りがあるのでお早めに。
Milah LibinとArvid Loganは同じ90年代にNYに生まれ、幼少期からZINEやアートに触れる環境に置かれており、特にMilahは父親の影響から映像にも関心があった。雑誌の編集者の傍、映像監督としての顔も見せる彼女の作風は、どこかスケートビデオのようなインスタントなカット割でありながら、ドキュメンタリーのようなリアルな描写もあって、ストリートの香りがプンプンする。Princess Nokiaの初期のMVの多くは彼女が手がけているので、是非チェックしてほしい。ボーイフレンドのArvidもペインティングアーティストとして活動しており、今回FOMEで取り扱うDizzyのグッズTシャツも彼のCGグラフィックが使われている。全部で3種類で、ニンテンドー64の様なざっくりしたCGグラフィックが良い感じ。
Dizzyには、90年代のAlleged Galleryに似たエネルギーがある。そこは、映画監督のMike Mills、伝説的スケーターのMark Gonzales、写真家のRyan Mcginleyなどを輩出したギャラリー。当店でも取り扱いのある、Susan CiancioloもAlleged Gallery出身のアーティストだ。ギャラリーオーナーのArron Roseが、全くの無名だった数々のアーティストを同じ箱の中に収め、新しい波紋を生み出していたのと同様に、Milahは編集というツールを駆使して紙媒体の中で様々なアーティストを紡いでいく。国内外のアーティストにフィーチャーし、トップアーティストから、ローカルで活動しているほぼ無名のアーティストまで、分け隔てなく同じ熱量で紹介する懐の深さに、かつてのArron Roseのような姿勢を感じる。
僕はAndy WarholのFactoryが起こしたムーブメント以降、2人がストリートカルチャーが再び熱を帯びた90年代に生まれた子供達だったことが、現在のクリエイティビティに大いに影響していると感じている。ストリートに根付いた社会的、経済的な格差に対する反骨精神が、2人の原点に繋がっているのではないだろうか。Milahは、これからの動きに目が離せないクリエイターの1人だ。
我々も、Dizzyと同じように現代に70~90年代にあった小さくも力強いシーンと近いものを作り出したいという想いがある。デジタルが普及した現代に、紙媒体として形に残るDizzy Magazineは、これから何かを起こそうと希望を持つ人々の大きな指針となってくれるに違いない。
8月6日のローンチイベントは、中津のカレー屋SOMAとのコラボの元、かなり密度の濃い内容に仕上がりました。SOMAでは最新号のJamaica Issueにちなんで、特別にジャークチキンのカレーを作って頂きます。SOMAのオーナー、和泉希洋志さんはプロのミュージシャンとしても活動しているマルチアーティストで、その日はモジュラーシンセのライブもして頂くことになりました。FOMEの店舗の方では、DJセットや中津のインテリアショップ、RAW LIGHT SPACEのコーディネートによる販売ブースなども楽しんで頂けたら嬉しいです。前日は、とにかくいっぱい寝てから来てください。お待ちしています。
佐々木