スペインが残ってる!

楽しかった記憶って、ずっと記憶に残っていますよね。2回ヨーロッパ買付に行って、2回ともアルギエンに会っているけど、どちらもとても鮮明に残っている。そのくらい彼らと会った思い出は、僕のかけがえのない宝物になっている。

前回は彼らと2回もあった。1回目は、スペインに到着した当日の夜、スペインで有名なタパスというスタイルで、僕と祐二、アルギエンの二人で、生ハムやらパエリア、トルティージャなどむこうの料理をワインと一緒に食べた。着いてすぐでとてもへとへとだったけど、それをワッと吹き飛ばすくらい、彼らと会うと最高に楽しかった。それでも、体は嘘をつかずにすぐに酔っ払ってグテングテンになったけど。


その日の最後に彼らがもし丸1日空いてる日があるなら一緒に田舎の方へ出かけようよと言ってくれた。取り扱い先とはいえ、まだ2回しか会っていない僕らに屈託なく誘いをくれたのは、素直に嬉しかった。

そして、その日僕らは彼らの車に乗せてもらって、バルセロナ郊外にある田舎町3件とサルバドール・ダリが妻ガラに贈ったガラダリ城に連れて行ってもらった。彼らが連れて行ってくれた町は、どれも日本ではあまり馴染みない石畳の建物で、とても古かった。周りは柔らかい空気と鳥の囀り、花の匂いがして、日本で春を感じる前にスペインで春を感じているのは、珍しいなと思ったのを覚えている。デザイナーのasierが花を摘んで匂いを嗅ぐ姿を見て、こんな光景もこの旅に行かなかったら見ることはできなかっただろうなと思っていた。現地の人が知るその観光地にいる僕らは、まるでスペイン在住の日本人のようで、それもなんだか面白かった。帰りの車では、ママス&パパスが流れていた。

彼らの服や香水などを見ると、連れて行ってくれた田舎町が好きな理由もわかる気がする。多分彼らは、もっと僕らにアルギエンのことを知って欲しかったのかなと思う。アルギエンが作る香水は本当にあの街や花の匂いがするし、ポートレートシリーズは彼らの人柄がすごく表れているんだな、と思った。

帰国してから1ヶ月半が経った。梅雨が始まって、FOMEの傘立てがパンパンになる、そんな季節にAlguienが届いた。オリジナルの専用ボックスに、一点一点丁寧に包装されて届けてくれるので、段ボールから開けた姿は毎度驚かされる。ピッタリと長方形の段ボールに収まっており、彼らの几帳面な性格が浮かび上がる。スペインで彼らの洋服を見させてもらった時、丁寧に並べているのを思い出した。

彼らの根底には、古き良きものに敬意を払い、それを独自の解釈で発展させ、新しいものを作るという考えがあります。それはオリジナルのデザインを新しいものへと置き換えるリデザインといえます。しかし、彼らが行なっていることは、それを同じ媒体から媒体へと変化させるのではなく、別の媒体から別の媒体にそのまま落とし込む行為です。それは、元のデザインのその先をデザインする。一種のデザインの拡張と言えると思います。それが、彼らのものを見て、僕をワクワクさせるものなんだと思います。今回は、それを大きく表しているポートレートシリーズをメインにオーダーしました。また彼らの日常着であるパーマネントコレクションと呼ばれるシンプルなものも用意しております。

アルギエンのシャツを見るたびに彼らとの思い出が浮かび上がり、日本でスペインレストランに行くくらいスペインが残っている僕と話をしに、アルギエンを感じにお店に遊びに来てください!明日から店頭に並びます。

倫太郎